主に映画製作の現場を支える技術者や制作会社といった「映画のつくり手」に贈る賞です。
映画・映像関連企業の集積する調布市の独自性を尊重し、「映画のまち調布」にふさわしい映画賞として、映画文化、芸術、産業の振興に寄与した映画・映像作品及びその製作に貢献した者を顕彰します。
各賞 計7賞(撮影賞、照明賞、録音賞、美術賞、編集賞、作品賞、功労賞)
撮影賞、照明賞、録音賞、美術賞、編集賞(技術部門)
受賞対象 | 映画製作の現場を支える種々の技術者 |
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選考方法 | 「映画のまち調布 シネマフェスティバル2020」で上映可能な人気投票上位10作品の実写映画をノミネート作品とします。各賞、映画製作において功績のある映画技術スタッフ等で構成する選考委員会で討議の上、受賞者を決定します。 |
ノミネート作品 | 『翔んで埼玉』、『キングダム』、『日日是好日』、『七つの会議』、『マスカレード・ホテル』、『新聞記者』、『コーヒーが冷めないうちに』、『アルキメデスの大戦』、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』、『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』 ※10作品 |
選考委員 | 撮影賞 川上 皓市、稲垣 涌三 照明賞 中須 岳士、野口 益登、石田 健司 録音賞 小野寺 修、志満 順一、藤本 賢一、尾崎 聡 美術賞 竹内 公一、安藤 篤、鈴木 隆之、岩城 南海子 編集賞 石島 一秀、小堀 由起子、穗垣 順之助、髙橋 信之 |
照明賞「日日是好日」水野 研一(みずの けんいち)
© 2018「日日是好日」製作委員会
選定理由
ほぼ茶室内で展開されていく話で、庭から入る障子越しの日差しは非常に工夫がなされており、光の力強さと質感でみごとに四季を表現していた。ロケセットの撮影で自然光を巧みに取り込み、劇的効果を高めるライティングとしている。演出、撮影、録音、美術、衣装、メイクと現場のすべてのパートにおいて高いレベルで融合している作品。
経歴
1951年、東京都出身。『写楽』(95)と『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)で第19、29回日本アカデミー賞最優秀照明賞を受賞。主な作品に『凶悪』(13) 、『クローズEXPLODE』(14)、『続・深夜食堂』(16)、『22年目の告白 私が殺人犯です』(17)など。大森立嗣監督作品は『まほろ駅前狂騒曲』(14) に続いての参加となる。
作品の見所や制作過程でのエピソードなど
撮影中天候にも恵まれ、柔らかい映像が出来、作品とマッチしたと思います。茶室の畳、障子、和服の色彩、四季にこだわり照明してみました。
録音賞「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」鈴木 肇(すずき はじめ)
© 2018映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
選定理由
俳優の役柄の特徴をとらえ、それぞれのセリフをキャラクターに合わせて丁寧に整えている。病院内のシーンが多いが、医療機器の音もさりげなく、程よいバランスのSE(音響効果)となっている。録音技師の人柄が出ている優しい音が、感動ドラマであり、コメディである作品にマッチしている。
※鈴木氏は2019年8月に逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
経歴
1961年生まれ、神奈川県出身。96年『岸和田少年愚連隊』(監督:井筒和幸)で技師デビュー。主な作品に『刑務所の中』(02/監督:崔洋一)、『釣りバカ日誌』シリーズ(03~09/監督:朝原雄三)、『SHINOBI』(05/監督:下山天)、『カラスの親指』(12/監督:伊藤匡史)、『はじまりのみち』(13/監督:原恵一)、『ホットロード』(14/監督:三木孝浩)、『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(16/監督:三木康一郎)などがある。
鈴木肇様ご親族より受賞コメントをいただきました
この度はこのような素晴らしい賞を頂き、誠にありがとうございます。 本作品(こんな夜更けにバナナかよ)は録音技師としての父の、最後の作品となりました。 父は、大泉洋さん演じる鹿野さんの、運命を受け入れ明るく生きる姿勢に共感する部分があると言っていました。 闘病を経て、現場復帰した作品が今作であったことは奇跡のような出会いだと感じています。 そして、きっと、受賞理由を聞いて照れながら喜んでいるのだと思います。 改めまして父と関わって頂いた前田監督をはじめ、スタッフ、キャスト及び関係者の皆様、父に代わりまして深く感謝致します。
美術賞「キングダム」斎藤 岩男(さいとう いわお)
© 原泰久/集英社 ©2019 映画「キングダム」製作委員会
選定理由
巨額な製作費が投じられた分、美術の重要性も大きく、その重責に応えた仕事は好感をもって見ることができた。中国ロケの巨大な咸陽宮のセット、リアルに作りだされた山の民という想像上の民族、細部にいたるまで配慮された背景、装飾、小道具、特殊メイクなどで、物語の壮大なスケールに相応しい美術となった。
経歴
1982年同志社大学文学部卒業後、(株)にっかつ入社。同年、美術監督デビュー。木村威夫氏に師事し、『ドグラマグラ』(87)で共同美術。96年より1年間、文化庁芸術家在外研修員として欧米を歴訪。’03よりフリー。主な作品に「リング」(98)、「ジョゼと虎と魚たち」(03)「THE JUON/呪怨」(05)、「アイアムアヒーロー」(16)「いぬやしき」(18)等多数。
受賞コメント
私の映画スタッフのキャリアは、「日活」入社より始まりました。以来30年以上調布市に在住してきました。このたび、愛する我が町調布市から、このような栄誉ある映画賞をいただき大変感激しております。ありがとうございました!
作品の見所や制作過程でのエピソードなど
原作の持つ躍動感を失わず、歴史考証とのバランスをとりながら、どちらも愛する観客に納得していただけるような美術をめざしました。
編集賞「翔んで埼玉」河村 信二(かわむら しんじ)
© 2019映画『翔んで埼玉』製作委員会
選定理由
アクションとドラマにメリハリがあり、長尺でも飽きさせない。テンポもよく、心地よい編集であった。埼玉県民が虐げられている架空の世界と現実世界のシーンバックが自然であり、ストーリーの分かりやすさに貢献していた。物語の濃厚さに対して、編集が主張しすぎていないことでうまくバランスをとっている。
経歴
東京都狛江市出身。専門学校卒業後、映像制作会社に入社。
その後フリーランスとして活動。主な作品にテレビドラマ「黒革の手帖」、「マルモのおきて」、「リーガルハイ」、「デート~恋とはどんなものかしら~」、「ドクターX」、映画『僕と妻の1778の物語』、『エイプリルフールズ』、『ミックス。』、『コンフィデンスマンJP』など。
受賞コメント
技術者にフォーカスのあたった映画祭で、賞を頂ける事は大変光栄であります。
また、翔んで埼玉を評価して頂ける事は、作り手としてチャレンジの幅も広がりますし、固定概念に囚われず、色々とトライしていきたいです。ありがとうございました。
作品の見所や制作過程でのエピソードなど
台本で、地名ネタなど、読む面白さをどう映像に落とし込むか悩んだ部分も有りましたが、武内監督のとにかく真面目にやるという、演出の大きな軸があったので、シンプルに普通の物語を繋ぐ感覚で作業を進めました。
例えば、埼玉決起集会のシーンでは、台詞こそ自虐に走りますが、芝居の熱量はもうスポーツ物の決勝戦前のロッカールームです。みんなを鼓舞する為にあの熱量を最大限に表現していきました。
作品賞 『天気の子』
© 2019「天気の子」製作委員会
選考方法
人気投票により決定。投票最上位作品となります。
あらすじ
「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。彼女には、不思議な能力があった。
功労賞 紅谷 愃一(べにたに けんいち)【録音技師】
受賞対象 | 調布市の映画文化、芸術、産業の振興に多大なる貢献と顕著な実績を残した者 |
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選考方法 | 調布市内の映画・映像企業等で構成する選考委員会で討議の上、受賞者を決定します。 |
選定理由
永年にわたり、録音技師として、創意工夫をこらしつつ迫真の音づくりに努め、多くの名作や話題作にサウンドデザインの力量を示して日本映画の発展に貢献した。大映(京都)を経て日活撮影所(染地)に入り、「黒部の太陽」(68)、「神々の深き欲望」(68)、「復活の日」(80)「楢山節考」(83)「八月の狂詩曲」(91)「鉄道員 ぽっぽや」(99)などを担当し、今村昌平、深作欣二、黒澤明、降旗康男らの巨匠作品を支え、毎日映画コンクール録音賞、日本・映画テレビ技術協会技術賞、日本アカデミー賞など多くの録音賞を受賞している。
また、(協)日本映画・テレビ録音協会の理事長を務め、その運営や後継者の育成にも力を尽くした。2010年に旭日小綬章を受章。
経歴
1954年大映京都撮影所を退社後、日活撮影所 録音課に入社。1980年日活撮影所退社後、フリー。
主な作品に上記の作品の他、『太陽を盗んだ男』(79)、『海峡』(81・日本アカデミー賞最優秀録音賞)、『南極物語』(83・毎日映画コンクール録音賞)、『黒い雨』(88)、『夢』(89・アメリカ・ゴールデン・リール賞)、『うなぎ』(96・日本映画・テレビ技術協会 技術賞)など。
受賞コメント
素晴らしい賞を受賞できて大変光栄です。多くの作品でご一緒した監督始めスタッフの皆さんのお蔭です。心から感謝します。ありがとうございました。
お問合わせ
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撮影賞「新聞記者」今村 圭佑(いまむら けいすけ)
© 2019「新聞記者」フィルムパートナーズ
選定理由
脚本を深く理解し、俳優の芝居に寄り添い、「人間」を撮ろうとしている姿勢を評価したい。手持ちの撮影手法を取り入れ主人公の心情をうまく表現し、観客に不安感を抱かせることに成功した。内調の部屋はフィルムの銀残しを思わせる色味を用いるなど、デジタル時代の撮影監督としての今後の活躍に期待したい。
経歴
1988年9月21日生まれ富山県出身。日本大学芸術学部在学中より自主映画を独学で撮影。撮影技師として24歳でデビュー。映画・CM・MVの撮影監督として活動する。主な作品に『星ガ丘ワンダーランド』(15)、『ユリゴコロ』(17)、『帝一の國』(17)、『光と血』(17)、『おじいちゃん、死んじゃったって。』(17)、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)、『ごっこ』(18)、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(19)、『デイアンドナイト』(19)など。
受賞コメント
30代最初に撮った作品でした。僕のような若輩者がこのような賞をいただいて、これからカメラマンになろうと思う学生たちに少しでもチャンスや希望が広がることを願っております。監督の藤井さんとも10年ほど一緒に映画を撮ってきて報われた気持ちです。選んでいただいてとても光栄です。これからも頑張ります。
作品の見所や制作過程でのエピソードなど
とても挑戦的な映画でした。企画プロデューサーの河村さんが「忖度のない映画づくり」をしようと言われていたことが印象的で、僕も忖度のない撮影をさせてもらったつもりです。普通これをやっちゃダメなんじゃないか受けいれてもらえないのではないだろうかと思いましたが、新聞社のシーンでの手持ち撮影、内調のシーンのブルーのライティング、カメラを90度傾けたカメラアングル、普通やるより一歩踏み入れて狙いました。この映画だからできたことだと思います。そこに意味を感じていました。
あとは松坂桃李とシムウンギョンの素晴らしい芝居に、食いついていくのに一生懸命だった記憶しかありません。