第7回映画のまち調布賞授賞式&『35年目のラブレター』先行特別上映会レポート
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第7回映画のまち調布賞授賞式
「第7回映画のまち調布賞」投票の対象となる作品は、2023年9月1日から2024年8月31日までに、国内の商業映画劇場で、有料で公開された日本映画。今回の投票は2023年11月17日から2024年9月1日にわたって行い、1万3695票が集まった。そしてその中から「映画のまち調布シネマフェスティバル2025」内で上映可能な実写映画上位10作品をノミネート作品として、各賞の映画・映像に造詣(ぞうけい)が深い有識者による選考委員会で討議の上、受賞者が決定。そして作品賞は前述した投票第1位の作品へと贈られる。また、特別賞は「映画のまち調布」の映画文化、芸術、産業の振興に多大なる貢献と顕著な実績を残した個人、もしくは団体、または近年に、めざましい活躍をした映画、映像関係者に贈られることとなる。
特別賞:「株式会白組」(登壇:株式会社白組 佐藤昭一郎氏)
「映画のまち調布」の映画文化、芸術、産業の振興に多大なる貢献と顕著な実績を残した個人・団体に贈られる「特別賞」は、調布スタジオがVFX制作を担った『ゴジラ-1.0』の株式会社白組が受賞した。同社に所属する『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督がVTRで「白組のスタジオのある地元・調布からこのような賞をいただけたことは光栄なことだと思っています。地元感があってとても嬉しい」とのコメントを寄せ、佐藤昭一郎氏は「昨年『ゴジラ-1.0』が第96回アカデミー賞®で視覚効果賞を受賞し、白組のスタジオがある映画のまち調布にも嬉しいニュースを届ける事が出来たのではないかと思います」などとコメントしながらトロフィーを受け取った。
特別賞:柴崎憲治氏(代理登壇:竹内久史氏)
もう一人の特別賞は「日本で最も多忙な音響マン」と呼ばれる音響効果技師・柴崎憲治氏が受賞。残念ながら欠席となったが「音響効果という仕事は、本当に裏方の仕事。賞と名の付く様な物に縁が無い仕事で、下手をすると、録音のおまけ的な扱いを受けるモグラみたいな存在だったような気がしてました。世の中が少し変わってきたのか、土の下から顔が少し見える様になって来たのかな?もう少し働いて身の丈ぐらい出れる様になって、音響効果の若い人達の励みに成れば」とのコメントを寄せ、竹内久史氏が代理でトロフィーを受け取った。
撮影賞:『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』小林拓氏
撮影賞は映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の小林拓氏が受賞。トロフィーを受け取り「技術者や観客の双方から『もう少し映画の世界で頑張りなさい』と言われているようで嬉しいです」と喜び、スタッフとキャストに感謝を述べた。
照明賞:『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』岸本秀一氏(代理登壇:小林拓氏)
照明賞は映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の岸本秀一氏が受賞。本日欠席の為「30年以上も住んでいる地元で、たくさんの人に観ていただけて、僕にとって何より嬉しい賞です。これからも、調布映画と一緒に成長していきたいと思っています」とのコメントを寄せ、撮影賞の小林氏がトロフィーを受け取った。
美術賞:『福田村事件』須坂文昭氏
美術賞は映画『福田村事件』の須坂文昭氏が受賞。トロフィーを受け取り「多くのスタッフに支えられてこの映画の美術を実現することが出来ました。小さな作品ではありますが、全スタッフの力の結実を本映画祭で評価していただけたことを深く感謝します」と述べた。
録音賞:『ゴジラ-1.0』竹内久史氏
録音賞は『ゴジラ-1.0』の竹内久史氏が受賞。トロフィーを受け取り「映画公開から1年以上経っている中で、沢山の方々にいまだに評価されるのが嬉しいです。多くの方々に劇場に足を運んでいただき、音を聴いていただき浸っていただける回数が増えたら嬉しいです」と呼び掛けていた。
編集賞:『ゴジラ-1.0』宮島竜治氏
編集賞は『ゴジラ-1.0』の宮島竜治氏は受賞。トロフィーを受け取り「満票ということで舞い上がっています。偉大な先輩方から評価されての受賞という事で、嬉しさを超えてゴジラに踏みつぶされて殺されてもかまわないような気持ちです」とユーモアを交えて喜びを噛みしめていた。
作品賞:『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(登壇:古賀豪監督)
調布市民及びイオンシネマシアタス調布来場者による投票の結果、最上位となった作品に贈られる作品賞は、アニメーション映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が選出された。トロフィーを受け取った古賀豪監督は「本作は観客の皆さんに見つけていただき、育ててもらった作品です。我々もまさかここまでの反響を頂けるとは思っていませんでした。水木しげる先生が愛した調布という街からこのような素晴らしい賞をいただけたことは運命の巡り合わせだと幸せに感じます」としみじみしていた。
『35年目のラブレター』先行特別上映
妻にラブレターを書くために60歳を超えてから夜間学級に通われた、西畑保さんの実話をベースに映画化。笑福亭鶴瓶の好演も話題だが、主演抜擢の理由について塚本監督は「西畑さん役は笑福亭鶴瓶さんにやってもらいたかった。実際の西畑さんとも似ているし、関西弁もネイティブ。楽しくて演技も上手くてみんなが知っている人と言えば、鶴瓶さんしかいないと思った」と念願叶った様子だった。
これに森谷氏は「鶴瓶さんには脚本の途中段階で何度もホンを持って行きました。いい脚本でなければ出てもらえないだろうと思って、鶴瓶さんでなければこの映画はやりません!という口説き文句でやりました」と笑わせた。モデルとなった西畑さんも映画を気に入っているそうで、塚本監督曰く「この映画のチラシを何千枚ももらって、会う人会う人に配っているそうですよ」と嬉しそうに報告した。
西畑さんに取材し、脚本を書き上げたという塚本監督。「西畑さんからお話を聞く中で心を動かされたり、勇気づけられたりしたので、それが丸ごと伝わるような映画にしたかった。悲しいから泣くのではなく、嬉しくて泣けるような。そんな映画を目指しました」と狙いを明かした。
鶴瓶のほか、原田知世、重岡大毅、上白石萌音が出演。森谷氏は「まさに奇跡のように決まっていきました。イメージキャストそのままの配役が実現した時は飛びあがるくらい喜んだ」と声を弾ませ「スタッフとキャスト全員が同じ方向を向いて映画を作ると、いい作品が生まれる。今回も関わった人たち全員が同じ眼差しで作品を見つめていることが感じられた」と手応え十分。塚本監督も「自分のやりたい企画が出来てキャスト陣も理想が叶った。その後の僕がやることは、皆さんの芝居を邪魔しない事でした」と全幅の信頼を寄せていた。
最後に塚本監督は「温かい気持ちで誰かにありがとうと感謝を伝えたくなるような、そんな映画になればと思って撮っていました。観てくれた方々にそんな気持ちが伝われば嬉しいです」と期待。森谷氏も「映画を観終わったら、大切な人に手紙を書きたくなるはず。スマホでぱっぱと済ますのではなく、大切な誰かに便箋で手紙を書いてもらえたら幸いです」と呼び掛けていた。