第6回映画のまち調布賞 受賞者発表
この賞は、主に映画製作の現場を支える技術者や制作会社といった「映画のつくり手」に贈る賞です。
映画・映像関連企業の集積する「映画のまち調布」にふさわしい映画賞として、映画文化、芸術、産業の振興に寄与した映画・映像作品及びその製作に貢献した者を顕彰します。
【技術部門各賞】 撮影賞、照明賞、録音賞、美術賞、編集賞
受賞対象:映画製作の現場を支える種々の技術者
選考方法:「映画のまち調布 シネマフェスティバル2024」で上映可能な人気投票上位10 作品の実写映画をノミネート作品とし、各賞、映画製作において功績のある映画技術スタッフ等で構成する選考委員会で討議の上、受賞者を決定する。
ノミネート作品: 『ラーゲリより愛を込めて 』『耳をすませば 』、『さかなのこ』、『Dr.コトー診療所』、『シン・仮面ライダー』、『東京リベンジャーズ2血のハロウィン編 –運命–』、『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 』、『銀河鉄道の父 』、『キングダム 運命の炎 』、『月の満ち欠け』
選考委員
〇撮影賞:岩倉具輝、酒井隆史、磯貝昇利
〇照明賞:西野哲雄、長嶋建人、祷 宮信
〇録音賞:志満順一、中村 淳、小野寺修、湯脇房雄、山本逸美、山本仁志
〇美術賞:安藤 篤、今井髙司、齋藤 卓、丸山裕司、鈴木隆之
〇編集賞 石島一秀、鵜飼邦彦、川島章正
【作品賞】
選考方法:日本映画人気投票最上位作品とする。
【特別賞】
受賞対象:「映画のまち調布」の映画文化、芸術、産業の振興に多大なる貢献と顕著な実績を残した個人若しくは団体又は近年にめざましい活躍をした映画・映像関係者
選考方法
調布市内の映画・映像企業等で構成する選考委員会で討議の上、受賞者を決定する。
〇協力 協同組合日本映画撮影監督協会/協同組合日本映画・テレビ照明協会/協同組合日本映画・テレビ美術監督協会/協同組合日本映画・テレビ編集協会/日本映画・テレビ録音協会(五十音順)
〇審査試写会場提供 株式会社角川大映スタジオ
作品賞:『すずめの戸締まり』
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会
撮影賞:水口智之 『月の満ち欠け』
【選定理由】
冒頭の主人公が八戸港を歩くシーンにもみられるように、シネスコの横長の画面のなかに、フレーム内の人物の動きとその背景となる事物が的確に配置され、全体としても落ち着いており、観客を違和感なく物語の世界に導いていた。照明との連携も優れており、ナイトシーンでは見せるべき室内の人間を捉えつつ、屋外の月も意識させる余白のある画づくりが美しい。撮影現場のスケールや雰囲気を自然に、かつ巧みに表現して作品世界を支えた堅実な仕事を評価したい。
【受賞コメント】
正直、驚いております。観てもらってナンボの仕事なので、有難く思います。記憶に残る作品に参加できたこと、ほんとうに感謝しています。ありがとうございました。
【経歴】
2003 年 第43回三浦賞受賞(『ドッペルゲンガー』)2009 年 ワインカントリー映画祭 2009 最優秀ワールドシネマ作品賞 、最優秀撮影賞受賞(『禅 ZEN』)
主な作品:『ドッペルゲンガー』『奇談』『恋する日曜日 私。恋した』『禅 ZEN』『おのぼり物語』『ここは退屈迎えに来て』『Mellow』
水口さんにインタビュー!
Q. 受賞作品はどんな印象の作品でしたか?
不思議な物語。純愛でもあり、撮り方次第でサスペンス・ホラーにも持っていけます。
散漫にならず、ぶれないように、淡々と日常を描く。
非日常も、続けば普通に感じてしまう。
人の機微、侘び寂びをドキュメントのように撮影していく。
永遠に続く、月の満ち欠けのように。
Q. 苦労した点
逆光・斜光・夕景など、条件を狙って撮りたかったのですが、都合よく天気は合わせてくれませんでした。
仕上げの段階で、それを逆手にとれないかと(狙いにする)試行錯誤。
Q. 心がけていたこと
時代を行ったり来たりするので、観てる人が集中できなくなるのを避けるため、シンプルに人物に目がいくように心がけました。
【映画撮影について】
Q. 撮影監督とはどのようなお仕事ですか?
それぞれのスタッフが思い描く、四次元の世界(二次元の世界)を、三次元の映像に形作る仕事。
それ故、現場のまとめ(仕切り)役、と同時に苦情受付係。
デジタル化に伴い、その役目も変わりつつある気がします。
Q. 撮影監督を志したきっかけを教えてください
成り行きでした。映画の世界に入りたかっただけで、どのパートと言う発想はなかったです。
専門学校の実習で、誰も撮影を担当したがらなかったので、手を挙げたしだいです。(子供の頃父親の8mmをいじってた事があったからだと感じます。)やってみると、自分の感性が活かせる気がして、楽しかったです。
Q. 撮影監督の魅力と苦労を教えてください
自分の狙い(センス等含め)がハマった時の嬉しさ。俳優さんの表情をまぢかで感じられるポジション。
ただ、やりたい事を理解してもらえない時の無力感。
説明するのが面倒くさくなり、すぐあきらめ、天を仰ぐ。
Q. 撮影監督にはどのような人が向いていると思いますか?
どのような・・・活躍してる(してきた)人達でしょうね、自分にはまねのできない。一言で言うなら、こだわりを大切にしている人でしょうか。柔らかく貫き通す。
Q. お仕事をする上で大切にしていることを教えてください
俳優さんとの距離感です。
Q. あなたにとって撮影監督とは?
ん~ん~ 飲み屋で、ほろ酔い気分で見る手品。
フィクションなんだけど、出来上がったものはノンフィクションになり、現実のものとして身近に感じる快感。
Q. 調布といえば?
調布は飲み歩きました。助手の頃ですが、仕事が終わり帰ればいいものを、軽くのつもりで愉快愉快。結局撮影所に泊まる日々。撮影部の部屋に、表札をつけたらとの先輩の声。カメラマンになった今でも、飲むためだけに電車に揺られて調布駅の改札を抜けます。
そう考えると、青春そのものですね。いろんな飲み屋さんに行きましたが、い志井さんが一番です。
善い先輩たちに恵まれました。
照明賞:佐藤浩太『銀河鉄道の父』
【選定理由】
宮沢賢治が成長していく明治大正期のランタン、裸電球などのあかりや、日暮れから宵闇に向かう気配を、照明設計上の色合いや明暗の違いなどで最大限に引き出していた。俳優の顔を照らす炎の揺らめきなど、登場人物の心情に寄り添う照明は物語への没入を促している。ほの暗い画面の中で明るさの細かな差を出すことは難しいのだが、ナイトシーンではしっとりとした空気になじむように障子の白色が抑えられ、映画に情感を与えていた。縁側で話す父子に流しこまれる光は二人の愛情を感じさせる絶妙のライティングだった。
【受賞コメント】
少し遅めの24歳で照明の仕事についてから26年の50歳の節目の年に思ってもいなかった形で評価を頂き、驚きと嬉しさでいっぱいです。助けてくれた助手さんに感謝です!
【経歴】
東京理科大中退。1997年松竹大船撮影所入社。まもなくフリーの照明助手として渡邊孝一氏に師事、2007年『ガチ☆ボーイ』で照明技師になる。
主な作品:『ヘルタースケルター』『TOKYO TRIBE』『予告犯』『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』『チワワちゃん』『望み』『ゴールデンカムイ』
佐藤さんにインタビュー!
【受賞作品について】
Q. 記憶に残っている場面や制作秘話
「雨ニモマケズ」は大好きな詩だったので、賢治の最期で政次郎が詩を読む場面はこの作品のクライマックスにふさわしい感動的なシーンだと思います。このシーンは1cutの長回しの移動クレーンで撮影しました。移動に合わせて一緒に動く手持ちのフィルライト(おさえ)は本来、助手の子がやりますが、ガラスの写りなどバレるリスクがあるのでわがままを言って自分でやりました。失敗できない緊張と興奮がありました。
Q. 苦労した点
動き回るカメラワークをかわして、時代物の持つ光の感じを表現することに苦心しました。
【映画照明について】
Q. 照明技師とはどのようなお仕事ですか?
現実にない光を、現実のように見せる、上手に嘘をつく仕事かなぁ?と思います。
Q. 照明技師を志したきっかけを教えてください
映画好きの青年がどうにか映画に携わりたいともぐりこんだのが照明部でした。
Q. 照明技師の魅力と苦労といえば何でしょうか
上手に嘘をつけば、どんなライティングも許される(観てもらえる)ところ
Q. 照明技師にはどのような人が向いていると思いますか?
「雨ニモマケズ、風ニモマケズ、雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ」人。できれば「イツモシズカニワラッテヰル」人
Q. お仕事をする上で大切にしていることを教えてください
観てくれる人が気持ちよくなれる嘘(ライティング)をしたいと思っています。
Q. あなたにとって映画照明とは?
「デクノボートヨバレ、ホメラレモセズ、クニモサレナイ」そんな照明を私はしてみたいです。
Q. 調布といえば?
日活撮影所、助手のチーフ時代、撮影が終わって師匠の技師さんを車で調布駅に送る短い時間、その日の撮影について話す会話がとても、懐かしいです。
録音賞:湯脇房雄『劇場版 TOKYO MER走る緊急救命室』
【選定理由】
爆発音や衝撃音など多くの音が入り乱れる火災現場でのマスク越しの会話など収録難度が高い撮影現場でありながら、リアリティのある状況表現とセリフの明瞭性を見事に両立させていた。全編を通して音楽、セリフ、効果音のバランス調整が絶妙であり、展開を盛り上げると同時に、観客を自然に物語へと引き込んでいる。映画館の環境を十全に活かした音づくりで作品を「映画」たらしめている、素晴らしい録音技術である。
【受賞コメント】
とても驚いています、テレビシリーズの映画化で録音の賞の対象になる事自体、あまり無いので、、
作品に対しては、寄り添って素直に録音する事、仕上げMIXも作品に寄り添って表現するように心がけました。
音の考え方はフラットに、よりフラットに、、!
同録(※)は、撮影、照明、美術、助監督、制作、スタッフの協力で成り立ちました。とても感謝しています。
※映像と音声を同時に収録することを指す、同時録音のこと。
【経歴】
2009年 第9回 日本映画テレビ技術協会 映像技術賞(録音)受賞(『ハゲタカ』)
主な作品:『レジェンド & バタフライ』『るろうに剣心 最終章 The Final』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』『億男』『刀剣乱舞 – 黎明 –』『刀剣乱舞 – 継承 –』『オズランド 笑顔の魔法教えます。』『ブルーハーツが聴こえる』『岳』『恋空』
湯脇さんにインタビュー!
【受賞作品について】
Q. 記憶に残っている場面や制作秘話
手術全般
Q. 心がけていたこと
素直になる事
【映画録音について】
Q. 録音技師とはどのようなお仕事ですか?
撮影現場では、主に台詞や状況音の録音。
仕上げmixでは作品の様々な音や音楽とのバランス。
Q. 録音技師を志したきっかけを教えてください
オーディオマニアで音に興味がありました。
Q. 録音技師の魅力と苦労といえば何でしょうか
音ですね、自然な音、動植物の音、音楽、に関わる事。好きな事を仕事としているので苦労とは思わないです。
Q. 録音技師にはどのような人が向いていると思いますか?
録音技師は、コツコツと我慢強く仕事出来る人。
Q. お仕事をする上で大切にしていることを教えてください
一歩ずつ、一歩ずつ、フラットに、よりフラットに!
Q. あなたにとって映画録音とは?
映画録音は「人生の真友」
美術賞:相馬直樹『耳をすませば』
【選定理由】
セット細部の質感にまでこだわった丁寧な仕事ぶりで、統一感のある美意識の下に創り出された作品世界が素晴らしい。とくに地球屋は、化粧柱(表に見える柱)が全体を引き締めつつ、暗がりではっきり見えない小物もセレクトされていることを感じさせており、装飾の腕を評価したい。コロナ禍でイタリアロケができなかったため国内施設が使われていたが、巧みにヨーロッパの雰囲気をつくり出していた。壁の漆喰が薄くなってレンガの線が見えているところや床のタイルなどは、実にリアリティのある仕上がりとなっていた。
【受賞コメント】
今回、このような素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございます。
この映画は原作とアニメのイメージが強くある中で、そのイメージを壊す事なく、加えてこの映画のオリジナリティを考慮して、僕なりにリアリティを追求した美術プランニングでした。そこを理解、評価して頂いたと思っております。ありがとうございました。
【経歴】
東宝特撮で美術助手を経験した後、池谷仙克氏に師事しキャリアを積む。その後、映画、CM、MV の美術を手掛ける。
主な作品:『サマータイムマシン・ブルース』『交渉人 真下正義』『20世紀少年』『漫才ギャング』『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』『窮鼠はチーズの夢を見る』『劇場』『HOKUSAI』『由宇子の天秤』『ちょっと思い出しただけ』等
相馬さんにインタビュー!
【受賞作品について】
Q. 記憶に残っている場面や制作秘話
地球屋の壁の味のある質感に悩んで、僕が若い時によく通っていた高円寺の名曲喫茶の壁がかなりイメージに近いのを思い出して、参考にさせてもらおうと何度か通い、塗装部にも見に行ってもらいました。
あと予算の都合もあり、聖司のイタリアの部屋のセットのパネルを組み替え、壁の塗装、テクスチャも変えて地球屋の2階のセットを作りました。
Q. 苦労した点
クランクインして中盤でコロナ禍になり、スケジュールも何もかも大幅に狂い、プランニングもかなり変更せざるをえなかったことが初めての事で苦労しました。
Q. 心がけていたこと
原作の空気感を壊さぬよう、自分の感じたリアリティを大切にしました。
演者がセットに入った時にその役に自然となれる空間を意識しました。
【映画美術について】
Q. 美術監督とはどのようなお仕事ですか?
映像に映り込む空間をデザインするお仕事です。
監督をはじめ、各々の部署との打ち合わせを積み重ね、美術部(大道具、塗装、造園、造形など)、装飾部とともにその空間を作り上げていきます。
Q. 美術監督を志したきっかけを教えてください
師匠についてアシスタントとして仕事をしていくうちに、毎回、異なる物を作っていく事に魅力を感じました。
Q. 美術監督の魅力と苦労といえば何でしょうか
新しいものを生み出す苦労と閃いた時の感動は紙一重です(笑)
当たり前ですが、美術予算というものがあり、その中でいかに理想に近づけるかの工夫が成功した時はテンションが高まります。
Q. 美術監督にはどのような人が向いていると思いますか?
映像美術は美術デザインに興味があることはもちろんですが、監督をはじめとする、様々なスタッフが関わらないと完成は出来ません。そのスタッフと同じ方向目指して進んでいくもので、大切なのはそこに向き合えるチームコミュニケーションを心掛ける事だと思います。
Q. お仕事をする上で大切にしていることを教えてください
どの仕事も毎回一つテーマを持って進めていきます。もちろん、台本、コンテを自分なりに理解して、何かきっかけになるもの、リンクするものなど、毎日生活していく中でも何か面白い、興味がある出来事を無意識に探していたりしています。一週間前のデザインと、その後に体験した事によってまるで違うデザインになる事もよくあります。
Q. あなたにとって映画美術とは?
僕の生き様です。
今までの人生での感動、成功、失敗、タイミング、誇れる部分、恥ずかしい部分など、多々経験してきた事をいかにデザインに落とし込めるかが、毎日の課題です。
Q. 調布といえば?
調布には角川大映、日活などの撮影所があり、いつも本当にお世話になっています。受賞作品の「耳をすませば」も角川大映スタジオにセットを建てさせて頂きました。
建て込みの時のランチはiL-CHIANTIというイタリア料理屋さんのカリブサラダが好きで(ドレッシングが美味しい)たまに行きます。
編集賞:菅野詩織『劇場版 TOKYO MER走る緊急救命室』
【選定理由】
東京と横浜チーム、高層ビルの上層階と地上という二つの対比をストーリーの軸として、緊張感のある場面が次から次と展開する、テンポの良い編集は完成度が高い。いくつものシーンを交互に見せるシーンバックの手法で観客の疑問をしっかりと補いながら、ドラマの展開を着実に追っていける、観客の視点に立った編集を現していた。芝居のリズムと俳優のリズムがシンクロしていた。医療ドラマらしく施術シーンを丁寧につないでいたことにも好感がもてる。
【受賞コメント】
初の映画編集でこのような素晴らしい賞を頂戴し、驚きとともに嬉しい気持ちでいっぱいです。
『TOKYO MER』は経験の少ない私に色々な景色を見せてくれるとても感慨深い作品です。
この賞に恥じないようこれからも頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
【経歴】
1990年埼玉県出身。東放学園専門学校を卒業後、2012年に制作会社へ入社。旧(株)東通のドラマ編集部へ派遣され、デジタイズ、PR編集を担当。その後フリーランスを経験し、2021年に旧(株)東通へ入社。現在、TBS アクトにてドラマのオフライン編集に従事。
主な作品:TBS 日曜劇場「TOKYO MER 走る緊急救命室」、TBS 日曜劇場「アトムの童」、TBS 日曜劇場「テセウスの船」、TBS 金曜ドラマ「ペンディングトレイン」、TBS 金曜ドラマ「フェルマーの料理」、NHK「やっぱりおしい刑事」
菅野さんにインタビュー!
【受賞作品について】
Q. 作品の見どころや力を入れたシーン
医療従事者の方々が観ても違和感のないリアリティや迫力のあるオペシーンは編集していて大変でしたが、とても見応えのあるシーンになったと思います。
Q. 苦労した点
ドラマの時のテンポが早い編集だとスクリーンでは目が追い付かないのではないかと思いつつ、その繋ぎがMERの緊迫感を表現していたので、試行錯誤しながら編集しました。
【映画編集について】
Q. 編集技師とはどのようなお仕事ですか?
物語に様々な感情を吹き込むことができる仕事だと思います。
Q. 編集技師を志したきっかけを教えてください
もともとは監督志望で専門学校に入ったのですが、1カット1カット繋いでいく編集の面白さに心が動き、仕事にしたいと思ったのがきっかけです。
Q. 編集技師の魅力と苦労といえば何でしょうか
一番最初の視聴者になれるというのは編集技師の特権ですが、それが世に出るというプレッシャーもあります。
編集で色々な見せ方が出来てしまうのが繋いでいて楽しいポイントです。
Q. 編集技師にはどのような人が向いていると思いますか?
技術的なことはやりながら覚えられますし、少しでも興味を持っている方なら誰でもチャレンジしてみてください。
Q. お仕事をする上で大切にしていることを教えてください
監督の意図、作品の意図、思っていることは十人十色なので、コミュニケーションを大切にしています。
Q. あなたにとって映画編集とは?
普段主にドラマ編集に従事しており映画に触れることは少ないので、ドラマとはまた違った知識を学べ経験できます。今回多くのことを学ばせていただいたので、今後もチャレンジしていきたい業界です。
特別賞:株式会社東京現像所
【選定理由】
1955年、映画用フィルムの現像所として調布市内に設立。精緻な色補正や合成は多くの監督の信頼を得て、東宝作品はもとより小津安二郎のカラー作品、松竹の『男はつらいよ』シリーズ、北野武作品など数々の名作を生み出してきた。近年は VFX、デジタルシネマなどの多様な分野で国内外の映像作品に携わり、黒澤明作品など旧作のデジタルリ
マスター作業も担当した。設立以降ポストプロダクションの要として、日本映画を支え続けてきた東京現像所は、「映画のまち調布」においても誇りとなる存在である。
【受賞コメント】
この度は、「映画のまち調布賞」特別賞の授賞、誠にありがとうございます。東京現像所は創業以来68年間に渡り、素晴らしい環境に恵まれた調布の地で映像の総合ポストプロダクションとして日本の映画界・映像業界の発展のために尽力して参りました。残念ながら2023年を以てその歴史に幕を下ろしましたが、送り出してきた数々の映像作品の中にその技術と魂が生き続けると信じています。
【社歴】
1955年4月 22 日、多様な最新機材を揃えたフィルム現像所としてスタート。高い技術力が評価され、高品質な現像、
プリントサービスを永年に渡り安定的に提供し続けた。
80 年代に最盛期を迎えたTVアニメ現像はシェア 70%近くにまで達した他、90年代以降急速に進むデジタル化にも積極的に対応。最新技術を開発し様々な映像表現に貢献した。旧作を4Kリマスターするアーカイブ事業にも注力し、数々の名作を公開当時の姿で伻らせ、映画ファンを楽しませている。
2023年11月末を以てその歴史に幕を下ろし、惜しまれながら全事業を終了することとなった。
特別賞:新藤次郎(プロデューサー)
【選定理由】
日本大学芸術学部を卒業、三船プロダクション等を経て、1986 年に(株)近代映画協会に入社。父である新藤兼人監督の作品を中心とする同社において、映画プロデューサー、また代表取締役として、『さくら隊散る』(1988)『午後の遺言状』(1995)などの優れた芸術映画を制作し、日本映画の豊かな魅力と多様性を示した。また、独立プロの協同組合、日本映画製作者協会の代表理事を長く務め、諸課題の解決に尽力。くわえて、製作現場の労働環境の改善をめざす「日本映画制作適正化機構」の初代理事を務めるなど、幅広い活動で映画界の発展に貢献した。
【受賞コメント】
この度、光栄にも「映画のまち調布」から特別賞を戴ける事は驚きです。調布には旧大映ST(現KADOKAWA)日活ST、多摩川を下れば東宝ST、今は無き三船プロダクションが在り、正に映画の街ですから、私のスタッフの経験はほぼこのエリアで過ごしました。特に大学時代にスチールとして参加した『裸の十九歳』のベースは大映STで、道を挟んで大きな2か所スタジオが在り見習い時代を体験しました。これからも映画文化発展の為に「シネマフェスティバル」が寄与することを期待いたします。
【経歴】
日本大学芸術学部写真学科卒。三船プロダクションを経て近代映画協会にてプロデューサーとなる。
新藤兼人賞プロデュサー賞・藤本賞・芸術選奨文部大臣賞・牧野省三賞 受賞。
主な作品:『濹東綺譚』『午後の遺言状』『生きたい』『三文役者』『ふくろう』『サヨナラ COLOR』『石内尋常高等小学校 花は散れども 』『一枚のハガキ』『島々清しゃ』