第6回映画のまち調布賞授賞式&『お終活 再春!人生ラプソディ』レポート

第6回映画のまち調布賞授賞式

「第6回映画のまち調布賞」投票の対象となる作品は、202291日から2023831日までに、国内の商業映画劇場で、有料で公開された日本映画。今回の投票は昨年127日から93日の約7カ月にわたって行い、15237票が集まった。そしてその中から「映画のまち調布シネマフェスティバル2024」内で上映可能な実写映画上位10作品をノミネート作品として、各賞の映画・映像に造詣(ぞうけい)が深い有識者による選考委員会で討議の上、受賞者が決定。そして作品賞は前述した投票第1位の作品へと贈られる。また、特別賞は「映画のまち調布」の映画文化、芸術、産業の振興に多大なる貢献と顕著な実績を残した個人、もしくは団体、または近年に、めざましい活躍をした映画、映像関係者に贈られることとなる。

■この日の受賞者の主なコメント。

特別賞:「株式会社東京現像所」(コメントは、株式会社東京現像所代表取締役社長 矢部勝氏)

 昨年の11月に、当社のすべての事業を終了し、すべての従業員が退職という形になりました。これまで東京現像所を支えてくださったすべての従業員、OBOGの皆さんを代表してわたしが賞を受け取り、お礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。フィルム現像には水が必要ということで、東京現像所が1955年に創業した時は、多摩川水系に恵まれ、水が豊富な調布の地を選んだと聞いております。以来68年と長きにわたって現像を続けてきて、最後まで恥じることない、クオリティの高い仕事ができたかなと思います。われわれの当面の事業は終了しましたが、映画の仕上げのためのカラーグレーディングを行う事業と、ビデオの編集事業、古い映画をよみがえらせるアーカイブ事業は、ほとんどのスタッフが世田谷の東宝撮影所に移りまして、事業を継承することができたなと思います。

 

特別賞:新藤次郎(映画プロデューサー)

わたし自身が、はじめてちゃんとしたスタッフとして参加した映画が(新藤兼人監督の1970年の作品)『裸の十九歳』という作品でしたが、スタッフルームも自前で用意できず、拠点にしていたのが当時の大映スタジオでした。かつては調布の道を挟んだ大きな敷地が両側にありましたが、今は片側だけ角川スタジオになっています。当時は見習いでしたから、ここに通ってくるのが大変でしたし、帰る時も夜中のてっぺんをまわることもありましたが、それでも続けてこられたというのは、現場にいるのが楽しいからでした。映画というのは、観るよりもつくる方が楽しいんです。だからもしお客さまの中で、まだ映画にたずさわっていない方がいらっしゃいましたら、われわれの仕事に、ぜひとも混ざっていただきたい。圧倒的につくる方が楽しいんです。今後もがんばりますと言いたいですが、自分も年をとったので。もう一本できたらと思っています。

 

撮影賞:「月の満ち欠け」水口智之

記憶に残る作品に参加できたのはありがたくうれしいことだと思います。調布というのは、助手時代に過ごした町なので、こうして賞をいただけたということにご縁を感じます。ありがとうございました、

 

照明賞:「銀河鉄道の父」佐藤浩太

この賞をいただいて、佐藤家の父も大変喜んでおります。帰ったらお祝いをしようと言われたので。いくつになっても親に褒められるのはうれしいなと。映画の宮沢賢治の気持ちを少し味わえたかなと思います。こういう機会をいただけて、本日はどうもありがとうございました。

 

美術賞:「耳をすませば」相馬直樹

この映画がクランクインしてからすぐにコロナ禍になって。スケジュールなどでいろんなアクシデントがありましたが、それにもめげずに、チーム一丸となってつくりあげた映画です。それが報われた気がしてうれしいです。今後の仕事を続けていくうえで、勇気をもらった気がします。ありがとうございます。

 

録音賞:「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室」湯脇房雄

まさか録音賞をいただけるとは思っておりませんでした。パニック映画で評価をいただけると思ってなかったので大変喜ばしく思っております。今度は恋愛映画とか、青春映画をやりたいです。ありがとうございました。

 

編集賞:「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室」菅野詩織

TOKYO MER」はドラマから編集に携わっていて。今回、私自身、はじめての映画の編集ということで、ドラマと映画の違いに試行錯誤しながら編集しました。慣れない中大変でしたが、本当にたくさんの方に観ていただいて。反響も大きくて、とても感慨深い気持ちです。この先、ひとつでも多く、皆さんの心に残る作品を届けていきたいと思っていますので、精一杯頑張っていきたと思います。

 

作品賞:『すずめの戸締まり』(制作統括の株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム常務取締役、徳永智広のコメント)

選んでくださった皆さま、そして劇場に足を運んでいただいた多くの皆さまに心から感謝申し上げます。今、ぼくが代表としてトロフィーを受け取っておりますが、この映画を送り出した新海監督、かかわってくださったスタッフのひとりひとりにおめでとうございますと言いたいです。これからもより多くのお客さまに、すてきな映画体験をしていただけるように頑張って作品をつくっていきたいと思います。

 

『お終活 再春!人生ラプソディ』先行特別上映

またこの日の授賞式の後には、5月31日公開予定の映画『お終活 再春!人生ラプソディ』の先行特別上映が行われ、同作に出演する松下由樹、水野勝、脚本・監督の香月秀之、プロデューサーの川田亮が舞台あいさつに登壇。本作が製作されたいきさつについて「一作目はコロナと重なって、ある意味運がない映画だなと思っていました。しかし映画が終わってから、非劇場上映という映画館がないところで映画を見せる団体があって。そこで一作目の映画が1位になって。映画館に来る人より多く観てもらえたんです。そこでパート2をやった方がいいんじゃないということになった」と語った香月監督。早くも続編の構想もできあがっているとのことで、「『男はつらいよ』みたいなシリーズにしてくださいと言われています。今回は第1作で水野くんと剛力(彩芽)ちゃんが出会ってから1年後。今回の映画は結納のシーンから始まるんです。だから3作目は結婚のシーンからはじまるんです。そして4作目は子どもが生まれるところから始まる。僕の頭の中ではそういう風なイメージができています。『男はつらいよ』のさくらみたいな夫婦になったらいいなと思っています」と構想を語った。

 

一方のキャスト陣も、続編が決まったことに「2作目のお話が来たときはぜひ、引き続きやりたいと思っていましたし、またエネルギーあふれる先輩がたとも、水野くんにもまた会えると思ってうれしかったです」と松下が喜びを語ると、水野も「香月監督の現場って早くて。夜の8時には終わるので、撮影中も疲弊していかない環境なので、笑顔でポジティブに作品に挑める環境なのでうれしかったですし、終活する世代にとってわれわれ世代は孫とかになるんですが、そうやって関わることはとても大事なことだと思う。だから家族がどこかに行きたいといったら応援するし、一緒にいられる時間をつくるとか、そういう意味で僕も理解が深まりました」と充実感をにじませた。